ふわりと溶けた

「ぁ、」

「?」

屋上で悠太と背中合わせをしている私は声をあげた
季節は夏。時間はお昼。屋上では心地の良い風が吹いていた

「どうしたの、名前」

「溶けた」

「ぇ、何アイス?」

「ううん。」

私は首を振る
今は、静かだ。
何故なら、他の皆は飲み物を買いに行ってるから

「じゃぁ、何?」

「雲。」

「あぁ…雲か…」

悠太も上を見上げる
コツン、と後頭部が当たった

「ぁ、ごめん」

「いいよ」

私は入道雲の輪郭を宙でなぞる
なぞってもなぞれない

「なんかさー。」

「うん」

「この世界のものって溶けるものがたくさんあるよね」

「そう?」

「うん。たとえば、わたあめ、雲、砂糖……」

「あぁ、確かにそうかも。」

悠太が頷く


「私達もいつか溶けちゃうのかな」

「と言いますと?」

「関係、崩れちゃうのかな」

ゆらり、悠太が揺れる

「溶けると崩れるは違うから、大丈夫」

「そっか」

「うん」


私は微かに鼻をすする


ギィ…
「ゆうたーん!名前、たっだいまー!」

「もー、廊下走っちゃだめですよーっ」

「ゆっきーも走ってたじゃーん!」

「何を言いますか。俺は走ってたんじゃなくて、早歩きしてたんですよ千鶴氏」

「あれは、走るに入るわ、ボケ」


みんなが帰ってくると一気に騒がしくなる

「ね?こんなのが崩れるわけないよ」

「うん、言えてるね」

私はくすり、と笑った


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